倭は国のまほろば
           たたなづく青垣山隠れる倭しうるはし

                             







これは 倭建命(ヤマトタケルノミコト)が 身罷る時に詠んだ
辞世の歌とされている。

私は この歌が好きで、古文の授業中 飽かず読んでいた。
大事に取っているはずの教科書も、家を離れてもう十数年、
蔵の中のどこにあるのか さっぱり分からない。

そこで 頼れる人に頼んで、日本書紀を要約したもののコピーを
送ってもらった。

久しぶりに触れる 文学的な世界に心が踊る。
授業で習ったのは たしか抜粋で、ここまで詳しいエピソードは 
なかったように思う。

    …女装した話も聞いた事あるある、
    「天群雲御剣」は読み方がテストに出たっけ。
    奥さんをなくしたり、新しい恋人が出て来たり。
    そうそう、最後は 白鳥になって 飛んで行くのだった…。


授業を教えてくれたのは教師2年目の若い熱血先生で、
時々 情熱が空回りするくらい 熱く語ってくれたっけ。
もう今は、ベテランの やさしい先生だろうなあ。
同級会に帰った事がナイので お会いする機会もないが
お元気だろうか。


教室を吹きぬけて行った 初夏のやわらかい暖かな風と
窓から見える木の葉の 緑のそよぎを今でも鮮やかに思い出す…。



*****倭建命(ヤマトタケルノミコト) 伝説*****

  
…ヤマトタケルノ命は 景行天皇の皇子の一人ですが、
国土を平定した英雄でありながら、
美しい外見とは反対に、生まれ持つ強大な力や、乱暴な気性のために
周 りの者はおろか実の父親(景行天皇)にすら恐れられていたほどです。

ヤマトタケルノ命の命運を悲劇の方向にし向けたのは
実の父の景行天皇自身です。
命の力を恐れた天皇はまず倭建命に旧敵である
「出雲一族の討伐」を命じます。
この命令の裏には倭建命の戦死を望む天皇の意図がありました。

ヤマトタケルノ命が、その地に赴いた時、
出雲一族の豪 傑出雲建兄弟は宴会を催していました。
女装すれば周りにいる本物の女達よりも美しかったほどの美男子だった
という命は、女装し彼らの気を引き 出雲建の側へ近づくや否や
斬り捨てました。
出雲建はヤマトタケルノ命に殺されるとき、
「たける」という一番強い者にのみ許される自分の名を与えます。
「倭建命」という名は、〈やまとの一番強い男〉という意味で、
出雲建からヤマトタケルノ命の武勇への尊敬と畏怖の念を以て
与えられた名前なのです。

せっかく、無事帰還した倭建命でしたが、景行天皇はますます彼を
忌み恐れる様になっていき、倭建命をねぎらうこともなく、
無理難題を与えます。
「朝廷に従わぬ東の神々を一人で征伐して来い」と
非情な命令を下しました。
当時 東国は、強豪ひしめくとても危険な地域でした。
この非情な命令に、命は「吾既に死ねと思ほし看すなり」と
自分の父天皇の真意に涙するのでした。

そんな倭建命を案じ、叔母ヤマトヒメは、
スサノヲ尊のヤマタノオロチからえた御神剣、天群雲御剣を授けました。
倭建命は、心をとりなおし、国造りのため、
御神剣を携え東征へ向かいました。
〈天群雲御剣は、
 草を薙ぎって災難を逃れた時、草薙の剣と追銘されました〉

東征は窮地の連続でした。
走水神の折には倭建命を慕ってついてきた
妻・弟橘比売(オトタチバナヒメ)も失ってしまいます。
愛する妻である弟橘比売が、その命を犠牲としたとき「あづまはや」と
心がはちきれんばかりに泣き叫びました。
〈そこから、東国を、【あづま】と呼ぶようになりました。〉

そんな激闘の東征の中で、
尾張の豪族の娘である美夜受比売(ミヤズヒメ)と
出逢いがあります。倭建命は、彼女と結婚の約束をします。
まずは敵を倒してからと、激戦を繰り返し、犠牲は払ったものの
何とか蝦夷を治め、やっとの想いで生還します。
倭建命は約束通り美夜受比売の元に戻ります。
美夜受比売の元に還ってみると、彼女は月経の真っ最中でした。
倭建命は歌います。 


  ひさかたの 天の香具山 利鎌に 
         さ渡る鵠 弱細 手弱腕を 枕かむとは 
   我はすれど さ寝むとは 我は思へど 汝が著せる 
                       襲の裾に 月立ちりにけり 
     

          これに美夜受比売、御歌に答へて曰く、

   
   高光る 日の御子 やすみしし 我が大君
             あらたまの 年が来経れば 
    あらたまの 月は来経往く 諾な諾な 
             君待ちがたに 我が著せる 襲の裾に 
                               月立たなむよ

           とうたひき。


当時、女性の月経は不浄なるものと思われていました。
ところが、倭建命は美夜受比売を強引に抱き寄せ、
契りを結んでしまったのです。それが禁忌な行為だと知りながら…・・。

このことが、倭建命の運命を終焉に導きます。
朝となって、倭建命は草薙御神剣を美夜受比売の枕元に置いて
次の戦いへ臨みました。伊吹山の神との闘いです。
百戦百勝の倭建命に魔がさしたのです。大切な守護御剣を女のもとに
置いていくとは…。
倭建命は、死の間際に「あの時草薙さえあれば...!」と草薙御神剣を
置いていった事を後悔します。

倭建命は思いがけない魔力に足を煩い、とうとう一歩も動けぬ体に
なってしまいます。
いよいよ終焉の間際、倭建命は辞世の歌を詠みます。
倭建命は、国を偲びます。

     大和は国のまほろばたたなづく
        青垣やまこもれる大和しうるわし
   

こうして倭建命は、孤独にその短い人生(30歳位)を終えました。しかし、
彼の魂霊は美しい一羽の白鳥へと姿を変え、
大空へ羽ばたいていったのです…


***この文章をUPした後、白鳥が飛んで行ったとされる地方の
             白鳥伝説を教えていただきました。
             大変興味深く拝見させていただきました。
                           情報ありがとうございます。***

            


            
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